訪問看護は一人ひとりに向き合える?元訪問看護師が感じたリアル

アイキャッチ画像:訪問看護は一人ひとりに向き合える?イメージと実態の違いやリアルな働き方を元訪問看護師が解説 看護師の働き方

訪問看護への転職を考えている方、あるいは「訪問看護って実際どうなの?」と気になっている方に向けて、元訪問看護師としてのリアルな体験を書きます。

「ゆっくり向き合える仕事」というイメージ

訪問看護と聞くと、こんなイメージを持つ人が多いのではないでしょうか。

「病院と違って、一人の患者さんとゆっくり向き合える仕事」

これ、半分は合っています。病院のように同時に何人もの患者さんを受け持ちながら動き回るのとは違い、訪問看護は利用者さん一人ひとりの家に、その人のためだけに伺います。物理的には、たしかに「一人に向き合って」います。

でも、そこに勝手に「ゆっくり」「じっくり」というイメージがくっついていないですか。

私は訪問看護師として通算4年働き、その後訪問入浴の現場にも携わっています。その経験から感じた「イメージと実態のズレ」を、そのまま書いてみたいと思います。

実態:1日5〜8件、1件30〜60分

訪問看護の現場は、実はかなり時間との戦いです。

1日に5〜8件ほどの利用者さん宅を回り、1件あたりの訪問時間は30〜60分。そこに移動時間も挟挟みます。かなりタイトなスケジュールです。

「一人一人に向き合える」のは事実でも、「時間をたっぷりかけられる」わけではありません。

さらに、この時間は看護師の裁量だけで決められるものではありません。介護保険や医療保険の限度額の関係で、必要だと感じても30分しか算定できないケースが多々あります。「本当はもっと話を聞きたい」「もっとケアの時間を取りたい」と思っても、制度の枠の中に収めなければならない現実があるのです。

病棟と訪問看護、何がどう違うのか

比較すると、この違いがはっきり見えてきます。

病棟 訪問看護
患者との関わり方 複数人を同時に受け持つ 一人の利用者さんに専念
緊急時の連絡手段 ナースコールですぐ呼ばれる なし(自分で気づく必要がある)
時間配分 ある程度自分の判断で調整できる 制度(保険の限度額)で決まっている
相談できる相手 医師・他の看護師がすぐそば 基本一人、判断はその場で自分が下す
移動 なし 訪問先ごとに車や自転車で移動

「一人に向き合える」という点は訪問看護の魅力です。でも、その分「相談できる相手がいない」「時間は自分では伸ばせない」という制約とセットになっています。ここを知らずに転職すると、ギャップに苦しむ人も少なくありません。

生まれるジレンマ

個別対応であることと、ゆっくり対応できることは、イコールではありません。「今日はこれで精一杯」と、時間内に収める判断をしなければならない日が、実際にはたくさんありました。

限られた時間の中でできる工夫

では、時間が足りない中で、私は実際どうしていたか。3つ紹介します。

動作を区切って、その都度ひと言添える

「せかせかしている」と思わせないための工夫として大事なのは、声掛けの「量」を増やすことではありません。

矢継ぎ早に実況中継のように喋ると、情報量は多くなり、むしろ忙しなさが伝わってしまいます。なので私は、一つひとつの動作を細かく区切り、その区切りごとに短くひと言添えるようにしていました。声掛けと声掛けの間に「間」を作るようにしています。

量ではなく、リズムの工夫です。

作業の内容によって、相槌の配分を変える

お話し好きな利用者さんへの向き合い方も、作業内容によって変わります。

理想は、目を見てじっくり話を聞くこと。でも、何かをしながらだとそうはいきません。たとえば爪切りをするときは、8割は爪切りに集中し、残り2割で相槌やオウム返し。これが薬のセットになると、ミスが許されない作業なので、9割は薬に集中し、相槌は1割弱まで減ります。

作業のリスクや繊細さに応じて、意識的に集中の配分を変えています。

どうしても集中したい時は、正直に伝える

それでも、どうしても全集中しなければいけない場面があります。そういう時は、誤魔化さずにこう伝えます。

「今ちょっとこっちに集中しています」

そして作業が終わったら

「お待たせしました」

これは単なる時短のテクニックではなく、利用者さんへの誠実さの表れだと思っています。「今は無理だけど、後でちゃんと向き合いますよ」という約束意味合いもあります。

こんな人には向いています/向いていません

ここまで読んで、「自分に向いているか」が気になっている人も多いと思います。私の経験から、正直にまとめます。

向いている人

  • 一人の利用者さんにじっくり集中したい
  • 時間管理が得意、もしくは工夫するのが苦にならない
  • 誰かに指示されなくても自分で優先順位を考えられる
  • 一件終わるごとに気持ちを切り替えられる

向いていない、あるいは苦労しやすい人

  • 時間に追われると焦ってしまいやすい
  • 「訪問看護=ゆっくり話せる仕事」というイメージを強く持っている
  • 一件ごとの切り替えが苦手(前の利用者さんのことを引きずってしまう)
  • 相談できる人がそばにいないと不安になりやすい

どちらが良い悪いという話ではなく、自分の性質に合っているかどうかの問題です。

訪問看護への転職を考えているなら

もし今、訪問看護への転職を検討しているなら、応募前にチェックしておきたいポイントがあります。

  • 見学(同行)ができるかどうか:求人票だけでは、実際の訪問件数や移動距離、ステーションの雰囲気は分かりません。実際に同行して訪問看護がどんな風なのか体験するもいいです。
  • 利用者さんの傾向:介護保険か医療保険のどちらが多い傾向かで仕事の内容や多忙さが変わってくるので利用者さんの傾向を確認してみるといいです。
  • 教育体制:未経験から訪問看護に入る場合、同行研修の期間や内容を必ず確認しましょう。
  • オンコール体制:オンコールの有無、頻度、手当は事前に確認しておくべき項目です。施設と訪問看護でオンコールの負担がどう違うか、こちらの記事にまとめています。

そしてもう一つ、探し方そのものも規模によって変えたほうがいいです。

大手の訪問看護ステーションを希望するなら、転職エージェントに求人が多く出ているので、エージェント経由での検索が効率的です。一方で、小規模のステーションはエージェントに求人を出していないケースが多く、SNSやステーション自体のWebサイトで直接募集をかけていることが多いです。「エージェントに出てこないから求人がない」わけではなく、探す場所が違うだけ、というのは知っておくと選択肢が広がると思います。

求人票の文字だけでは分からないことが多いからこそ、実際に見学したり、訪問看護に詳しい担当者に相談したりできる転職サービスを使うのがおすすめです。私は「MCナースネット」で探しました。



「一人一人に向き合える」というイメージは、間違ってはいません。ただ、その中身は「ゆっくり」ではなく、「限られた時間の中でどう向き合うかを工夫し続けること」なのだと思います。自分がその働き方に向いているかどうか、見学などを通して実際に確かめてみてください。

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