SNSを見ていると、看護師の転職や働き方についての投稿に、こんな声がよく集まっています。
「病棟業務以外の委員会やカンファレンスが多すぎて、本当に無駄な時間だと感じる」「時短で週3〜4、丁寧に患者さんと関わりたいだけなのに、それがなかなか叶わない」。
私自身、長年病棟で働き、師長として現場を見てきた立場から言うと、こうした声にはとても共感します。そして同時に、こう思うのです。
「それ、あなたの頑張りが足りないからじゃないんです」
今日はその理由、つまり看護師の給料がどういう仕組みで決まっているのかを、できるだけシンプルにお伝えしたいと思います。
医療・介護の収入は、実は”頑張り”では決まらない
営業職なら成果を出せば歩合が上がる。販売職なら売上を伸ばせば評価される。多くの仕事は「自分の頑張り」が収入に直結する仕組みになっています。
でも、医療・介護の世界は少し違います。私たちの給料の元になるお金は、病院や事業所が受け取る「診療報酬」「介護報酬」から出ています。これは国が2年に一度(介護は3年に一度)見直して決める、いわば全国共通の”値段表”です。
つまり、どれだけ丁寧に患者さんと関わっても、どれだけ経験を積んでスキルが高くても、そのこと自体が直接あなたの給料を上げるわけではありません。事業所全体が受け取る報酬の枠が、まず制度によって決まっている。そのうえで、その枠の中からあなたの給料が支払われている、という構造なのです。
近年の診療報酬改定でも、物価高騰や人手不足への対応として、報酬の引き上げが行われています。
つまり、給料が増えるタイミングも、「現場が頑張ったから」ではなく、制度改定の影響を大きく受けるということです。
加算のカラクリ:「やったこと」を証明しないと収入にならない
ここで出てくるのが「加算」という仕組みです。基本の報酬に加えて、一定の条件を満たすとプラスで報酬がもらえる、というものです。
この「一定の条件を満たす」というのがポイントで、加算を取るには、ただやっているだけではダメで、「やったことを記録し、証明する」必要があります。だからこそ、記録や書類、委員会での確認作業が必要になってくるのです。
私が師長をしていた頃も、加算を取れるか取れないかで病棟の収入は大きく変わりました。だからこそ管理職としては、加算に関わる記録や体制づくりにどうしても力を入れざるを得ませんでした。現場のスタッフからすると「なんでこんな書類ばかり増えるの」と感じる作業も、実は病棟や事業所の収入を支えるための、避けられない仕組みだったのです。
もちろん、病院や管理職が現場を苦しめたくて書類を増やしているわけではありません。
制度上、収入を維持するために必要な仕組みだからこそ、現場にも負担が生まれているのです。
「無駄」に感じる業務の正体
ここまでの流れを整理すると、こうなります。
収入源は診療報酬・介護報酬という制度で決まっている → その中で収入を増やす手段が「加算」 → 加算を取るには「やったこと」の記録・証明が必要 → だから記録や書類、委員会などの業務が増える。
つまり、SNSで見かけた「病棟業務以外の作業が無駄でストレス」という声、あれは決して的外れな感覚ではなく、「加算の証明作業」という、収入の仕組みそのものから生まれている負担だったということです。あなたが非効率なのではなく、制度がそういう構造になっている、というだけなのです。
まずは仕組みを知ることから
「頑張っても頑張っても、給料が上がる気がしない」「このしんどさから抜け出したい」。そう感じている方に、まずお伝えしたいのはこれです。
その苦しさの正体は、あなたの努力不足でも、能力不足でもありません。医療・介護という業界そのものが「個人の頑張り」ではなく「制度上の加算」で収入が決まる仕組みになっている、というだけのことです。
ただ、ここで一つだけ、はっきりさせておきたいことがあります。「じゃあプレッシャーの少ない職場に移ればいい」という話ではありません。もちろん、働く場所によって負担の種類や大きさは変わります。ただ、病院だろうと在宅だろうと福祉施設だろうと、収入が診療報酬・介護報酬と加算という仕組みで成り立っている以上、この制度そのものから完全に離れることはできません。
だからこそ大事なのは、逃げ場を探すことではなく、この仕組みを理解した上で、どう向き合っていくかということです。実際に私自身、病棟勤務や福祉施設での正社員を経て、現在は派遣看護師として働いていますが、どこにいても加算という土俵の上にいることに変わりはありません。
まずは、「過酷な仕事なのに給料が上がらない」と嘆く前に、この仕組みを知ってください。
頑張ることをやめる必要はありません。
でも、この仕組みとどう付き合うかは、自分で選ぶことができます。
制度の理解をしつつ、私なりの働くコツはこちら。
看護師は頑張りすぎなくていい|ちょっと力を抜いて働くという選択


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